コース: サステナビリティの基礎:基本概念

環境会計と炭素会計

ここまで、ネットゼロと気候レジリエンスと ネイチャーポジティブの 重要性を説明してきました。 次に確かめなければならないのは、 この3つの目標に向けた 私たちの進捗状況です。 困難であっても、 明らかにすることは重要です。 測定が不可能なものは管理も 不可能だからです。 そこで生まれたのが、 環境会計という概念です。 環境会計は、企業が環境に及ぼす 影響や自然への依存状況を測定し、 記録していく取り組みです。 あなたが店で商品を買う時、 値札のほかにその商品が 生み出している環境コストを 考えてみることはありますか。 多くの場合、環境コストが商品の 値段に反映されることはありません。 でも、その商品を製造する過程で、 どれだけの水が使われたか、 どれだけの廃棄物が生まれたか、 さらに、開発段階からどれだけの 温室効果ガスが排出されたのかを、 想像してみてください。 それぞれが及ぼす影響を 完全に把握することは困難ですが、 これからの世界には不可欠なのです。 開発からサプライチェーンまでを 包括する段階別の環境コストが 測定できれば、的を絞った 環境対策やサステナブルな製品作りに 役立ちます。 また、さまざまな製品や サービスの環境負荷が開示されれば、 投資家や消費者も環境への 影響を考慮した選択を行うことができます。 気候、水、エコシステムへの影響や 依存度を算定し開示するよう 求められる企業は増えています。 ここでは話をわかりやすくするため、 炭素会計と呼ばれる温室効果ガスの 実態把握を中心に説明しましょう。 炭素会計とは、企業の活動によって 大気中に放出されたり除去されたりする、 二酸化炭素などの温室効果ガスの量を 継続的に測定し、記録することです。 前の章で学習した、ネットゼロの概念を 思い出してください。 人間の活動によって大気中に放出される 温室効果ガスの量と、除去される量が ちょうど釣り合う状態です。 壊滅的な気候変動を避けるには、 今世紀半ばまでにネットゼロを 達成する必要があり、 多くの企業がこれと同等か それ以上の公約を行っています。 炭素会計はどう行うのでしょうか。 最も一般的な方法は、 GHG プロトコルと呼ばれる 国際的な標準に基づいて、 自社や組織の排出量と除去量を 測定、管理、報告することです。 GHG プロトコルでは、 温室効果ガスの排出をスコープ1、 スコープ2、スコープ3という 3種類に分類します。 温室効果ガスは、排出源がどこかによって、 3つのいずれかに分けられます。 スコープ1は、その企業自体の活動に 伴って生まれる排出です。 例えば、ある電子機器メーカーは 製造過程で天然ガスを燃やす工程が 必要だとします。 この工程で、二酸化炭素などの 温室効果ガスが大気中に放出されます。 これらは、この企業における スコープ1の排出として計上されます。 また、自社のトラックを使った 輸送を行う企業なら、 トラックの燃料から出る温室効果ガスが スコープ1の排出になります。 スコープ2の排出は、その企業が外部から 供給を受けて消費するエネルギーの生成に 伴う排出です。 例えば、工場の稼働や社内の照明、 空調などに使う電気を電力会社から 購入している場合、 消費電力に対応する排出源は 社外にあるため、スコープ2に分類します。 スコープ3は、その企業自体の 活動に関わる排出ではなく、 企業のサプライチェーン全体から 間接的に排出される温室効果ガスを 集計します。 製造企業なら、上流の仕入先から、 自社の製品を使うために電力を消費する 顧客まで、サプライチェーンに連なる さまざまな関係先の排出が含まれます。 その量を測ることは特に困難です。 仕入先分は、金額ベースのデータによる 推定が一般的です。 製造に必要な資材やサービスに 支払った金額をもとに、 排出量を算定する方法です。 この方法の問題は、温室効果ガスの 排出が少ない仕入先を選定しても 算定量に反映されないことです。 一部の企業は、仕入先や顧客と協力して 排出につながる さまざまな活動のデータを収集し、 バリューチェーン全体の排出量を 算定する方法に移行を始めています。 企業が3つのスコープすべてにわたる 排出量を直接測定していることは稀で、 個々の活動ごとの排出係数を使った 推計が行われます。 ここで解説したことは大まかな概要で、 実際の炭素会計や環境会計の分野は、 もっとはるかに広範で、 しかも急激に進化しています。 専門家や企業や政府などの間では、 人間が環境に及ぼす影響や環境への 依存度を測定する仕組みを整え、 よりよいものにするための取り組みが 続いています。 炭素会計を含む環境会計の仕組みは、 まだ基本の足場ができた段階です。 これからも、科学技術の進化に伴って 発達を続けることが予想されます。

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