Special Report
村上隆トークイベント:GEISAI #11を語る
日本の新進アーティストを国内のみならず、世界に向けて発信しようと、2001年のスタート以来今回で11回目を数える「GEISAI」。その「GEISAI」の立役者であり、チアマンを務めるアーティスト・村上隆氏によるトークイベントが、Apple Store, Ginzaで開催されました。ゲスト・アーティストの柳澤智武さんによるパフォーマンスで幕を開けた会場には、「GEISAI #11」の開催直前ということもあり、国内外から多くのオーディエンスが集まり、村上氏やゲスト・スピーカーのお話しに熱心に耳を傾けていました。
日本のアーティストが夢を実現し、国際市場に進出するための最適の場。
「GEISAI」は、オリジナル作品を制作し、発表する意欲を持ったすべてのアーティストに参加資格が与えられるイベント。たくさんの来場者に作品を見て、触れてもらう機会であるとともに、毎回審査員として招かれる世界で活躍するアート界のキーパーソンと直接触れ合える貴重な場でもあります。
「日本のアートシーンでは、ほとんどの場合アーティストにしかフォーカスが当たらないため、どんな職業の人がアートの世界で働いているのか、どんな役目や関係性をもって業界が成り立っているのかわからない。そこで、GEISAIでは毎回、ミュージアムの学芸員や、ギャラリスト、コレクターやバイヤーといった方々を世界中から招いて、GEISAIに参加される皆さんとチャンスをシェアできればと考えています」(村上氏)
当日は、オープニングでGEISAIのビデオをバックに即興演奏をされた柳沢智武さんのほかにも、第1回目のGEISAIをきっかけにプロデビューを果たしたアーティストの佐藤玲さん、そして今回審査員としてGEISAI #11に参加されるアート・アドバイザーのフィリップ・セガロ氏というお二人をゲストに迎えてトークセッションが行なわれました。今年NYでの大規模な個展で成功をおさめた佐藤さんは、ご自身がいままさに体験している現在進行形のアートの現場からのお話し、セガロ氏は世界中のコンテンポラリーアート・マーケットのエキスパートから見たGEISAIというイベントについて語られました。
「第1回目のGEISAIに出展したときは、とにかく緊張していました。展示のしかたなど、まったく考えていませんでしたから、ほかの人のブースを見て勉強しました。そういう意味では、見るだけでも意義があると思います。賞を受賞したり、雑誌などにスカウトされるだけでなく、自分からチャンスを見つけたいという人には、とてもいいイベントです」(佐藤さん)
「日本の若手アーティストが夢を実現し、国際市場に進出するために、いかにGEISAIが適した場であるかということをレイ(佐藤さん)のストーリーが証明したと思います。仕事上、世界各地のアートフェアに参加します。
しかし、どこで開催されるアートフェアも、ギャラリーが持っている在庫を展示するという同じような内容です。そうした意味で、これほど多くのアーティストが参加するGEISAIは世界から見ても非常に特殊で、同じような主旨で行なわれているイベントは、ほかに思いつきません。しかも、それがタカシというアーティストの側から起きたということも、とても面白いと思います」(セガロ氏)
「GEISAI」は、美術学校の学園祭をイメージしたお祭り。
自らも、日本のカルチャーをモチーフにした作品で世界のアートシーンに旋風を巻き起こした村上隆氏。近年ではルイ・ヴィトンとのコラボレーションを手掛けるなど、既成の枠にとらわれない活動を続けている村上氏は、どういう思いでGEISAIを始められたのでしょうか。
「たとえば海外で個展を開いたり、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションなどでは、それこそセレブが集まるようなレセプション・パーティーに出席したりしたのですが、いまいちノリきれない。それで、今まででなにが一番楽しかったのかなぁって考えたら、学園祭だったんですよ。ノスタルジックな学園祭的なもの、参加者が体験できるアートのお祭りにヒントを得たのです。 現在アート市場は活況を呈しており、お金で評価されるように見られがちですが、友だちに作品を見せるために始めたフリーズという小さなイベントに端を発したダミアン・ハーストが、世界を相手にしたように、ローカリズムに根ざした日本のアートをエキスパンドさせる狙いもGEISAIにはあります」(村上氏)
コンピュータとネットワークによって広がる自由と可能性。
トークセッションの途中では、インターネットから発信されているパフォーミング・アートのビデオ作品を紹介しながら、まったく新しいアートの在り方などについてまで話題が及びました。 「僕もこうして、Macを操作しながらお話しをしていますが、ネットで生まれたアイディアが実現したり、そうして出来た作品をYouTubeで公開することによって、より多くの人に見せるといったカルチャーも熟成してきていると思います。コンピュータとネットワークの環境によって、クリエイターである我々や、ビジネスをされている方もそうですが、自由と可能性がものすごく広がっています。新しいことを起こしたいと考えている人々にとっては、素晴らしい世界がやってきているんです」(村上氏)
そんな未来をきっちりと視野に入れた、生粋のアーティストたちが起こすイノベーション。そのひとつが「GEISAI」というムーブメントではないでしょうか。また、そこから生まれ始めている新しい可能性の息吹を客席からもしっかりと感じ取ることができました。すでに、次回「GEISAI #12」の開催も決定し、ますます加速する日本のアートシーンの最先端から、今後も目が離せません。
(2008年9月12日 Apple Store, Ginzaにて)
Photo
この日も会場に入りきれないほどのお客様に来ていただきました。
GEISAIについて面白く紹介いただきました。
審査員としてGEISAI#11に参加されるアート・アドバイザーのフィリップ・セガロさん。
GEISAIをきっかけにプロデビューを果たしたアーティストの佐藤玲さん。
自らの創作現場の軌跡を写真と共に語る村上隆さん。